“幻”に終わった母との散歩。

2018年9月8日

記憶が薄れる前に書いておこうと思う。

 

夏も終わりを迎えようとしているとある夕方、陽射しはそれほどでもないが、外はむっとした熱風に包まれていた。

僕は母と二人で散歩に出かけようとしていた。

何でこんな時に散歩しようと思ったのか、分からない。

ただ母は元気そうで、散歩に出かけるのがすごく楽しみのようだった。

母は僕より数十歩先、少し砂ぼこりの舞う道端に、端正な後ろ姿を見せて、僕が近づいてくるのを待っていた。

今まさに母のところへ歩き出そうとしたその時、僕の脳裏にある”奇妙な”想いがよぎった。

“あれっ、何かがおかしいぞ。

でも何だろうな、何がおかしいんだろう・・・。“

その想いが何だか分からないまま、僕は母の元へと近づいていった。

そして母の横にたどり着いた時、急に脳裏に閃いた。

 

“母はもう亡くなっているのだ・・・。”

 

・・・いやいや、そんな訳ない。

実際こうして母と一緒に散歩にでかけようとしているじゃないか。

全くなんでこんなことを想うのだろう。

「お母さん、今何か変な事が頭に浮かんでね、お母さんがもう亡くなっているっていうんだ。

一体何なんだろうね。」

それを聞いた母は何も言わずに、ただニッコリとほほ笑んだ。

僕は、

“こんな元気そうな母がもう亡くなっているって思うなんてどうかしてる。

もしかしたら夢じゃないだろうな。

よし、母の背中を押して、これは夢じゃない、母は確かに目の前にいると確かめてみよう。“

そう思った。

僕はそっと、でも力強く母の背中に手を回した。

母の背中は肉づきがよく、ふくよかな感触が手のひらを通して伝わってきた。

“ああ、やっぱり夢じゃない。”

そう思い安心した刹那、こうも思った。

“あれっ、でもお母さんの背中ってこんなに肥えていたっけ。

もっと痩せていたはずだけどなぁ・・・・・・。“

 

 

僕は目を開いた。

見覚えのない天井が目に入り、買ったばかりの真新しいベッドの上にいる自分に気づいた。

昨夜は新居に引っ越して過ごした最初の夜だった。

やはり夢だったのか・・・。

目が覚めるその時まで、全く夢だと分からないリアルな”事象”だった。

 

母がなくなって今月で丁度一年。

このタイミングでこんな夢を見るなんて、亡くなった母も我々と一緒に新居に引っ越してきたのかのようだ。

 

いや、実際そうなのかな。

 

元気にされているようですね、お母さん。

安心しましたよ。

連絡どうもありがとうございました。

 

 


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