僕が考える、いい歳の取り方(パート1)。

もうすぐ50歳を迎えるのですが、最近想うことが標題にもあります、いい歳の取り方って何だろうということ。

ひと昔前だったら50歳と言うと、もう人生の晩年に近づいているみたいな感じでしたが、今では医学の発達もあり、まだまだ折り返し地点とも言えそうです。

そんな中つらつらと空想の世界にふけりながら想ったこと・・・。

いい歳の取り方、価値ある人生とは一体何なのか?

以下簡単な物語にしてみました(話がちょっと過激すぎたか・・・)。

悪蔵(あくぞう)。

俺の名前は悪蔵。

俺にとって人生とはただ自分が楽しめればいい、それだけだ。

楽してお金を稼いで、誰にも指図されず、自分がやりたいままに毎日を過ごすこと。

起きたい時に起きて、寝たい時に寝る。

欲しい物は何でも手にいれ、行きたいところがあればいつでも行く。

食べたいものだけ食べ、飲みたいものだけを飲む。

嫌いな奴とは付き合わないし、女も飽きたら次に交換。

自由気まま、好き勝手にやるだけさ。

他人なんて関係ないね。

所詮この世は金だ。

金さえあれば大抵のことは何でもできる。

だからいかに楽して大量に金を稼ぐか、それが俺の人生の一大関心事だ。

そんな俺がたどり着いた職業は、詐欺師。

インターネットを使って知らない奴らから金をむしり取る仕事だ。

最初はちょっと良心が痛んだけれど、この情報社会、自己防衛の仕方もろくに知らずに過ごしている奴らが呑気すぎるんだよ。

高い授業料を俺に払っているようなものさ。

今月も今までに稼いだ金額は2,000万円を突破した。

かもになるお客の情報料100万を支払ったとしても1,900万の利益だ。

何もせずに俺の懐に入ってくるのだから、こんなおいしい”商売”が他にあるだろうか。

今晩も”会社”で所有しているクルーザーでもって、商売仲間を呼んで盛大なパーティーを開く予定だ。

まああえて言えば、これだけが俺の仕事らしい仕事かな。

でもまだまだだ。

35歳になったばかりだし、これからもっともっと欲望の限りを尽くしてやる。

この世のありとあらゆる贅沢を俺は尽くしてやるんだ・・・。

 

 

 

善蔵(ぜんぞう)。

僕の名前は善蔵です。

生まれた時から障害があって、知能の発達が遅れています。

両親は僕が20歳の時に事故に遭って亡くなってしまいました。

たった一人の息子を残して両親は逝ってしまいました。

その時得た両親の生命保険、財産などは、僕に障害があることを悪用した親戚に全て持っていかれてしまいました。

お陰で僕は以来、日雇いの肉体労働をして自分の生活を支えてきました。

そんな窮地にいる僕を5年前に救ってくれたのが、同級生の悪蔵君です。

いじめられっ子だった彼を可哀そうに思っていた僕は、いつも彼を慰めていたんだけど、その時の恩返しだって彼の会社に誘ってくれたんだ。

悪蔵君はインターネットのコンサルティング会社を経営しているんだけど、僕はそこの会社の給仕・清掃員として働いています。

悪蔵君の会社は凄く流行っていて、数か月前に会社専用の大きな船を買ったし、つい最近新しい高層ビルの最上階に引っ越したばかりなんだ。

悪蔵君はあんまり会社で見かけないけど、きっと外でお客さんと会ったりして忙しいんだろうなあ。

彼が僕を雇ってくれているお陰で、毎月給料がもらえて、アパートにも住めて、ごはんも食べれるし、好きな昆虫観察も続けることができて本当に有難いです。

今もアパートに住み着いている蜘蛛の観察が楽しくてしょうがないんだ。

自分のブログに少しづつ観察結果をアップーデートしてるんだけど、小学生の子供達がたくさん見ていてくれてるみたいで、昨日もいくらかコメントがあったなあ。

自分の好きなことをやって子供達に喜んでもらえるって、本当に素晴らしいことだって最近つくづく感じるんだ。

さて、今晩は悪蔵君から船での接待のお手伝いをするようにって言われてるから、夜遅くなるし昼寝でもしとこうっと。

 

 

 

宴。

「いや~、本当かもの連中紹介してくれて助かるよ。これからもよろしくね。今日はじゃんじゃん飲んで騒いで楽しんでよ。」

悪蔵の媚びた慇懃な口調は、アルコールが入って適度に酔った連中の耳に心地よく響いた。

この日クルーザーに集まった人数は50人ほど。

闇の情報提供者、悪蔵の金を目当てにビジネスを企むもの、パーティーを盛り上げる女たちなど、皆腹黒い連中ばかり。

ありとあらゆる贅沢を尽くした料理と飲み物が、船内のメインルームに所せましと並んでいる。

暗黙の了解として、ご希望とあらば”薬”も用意されているようだ・・・。

これから快感に満ちた長い長い一夜の宴の始まりだ。

参加者の、五官の欲望に満ち溢れた想いを発散させる雰囲気が、船内のそこら中に充満していた。

 

「善蔵、このテーブルのお客さん、料理来てないけど、ちゃんと見てる?」

悪蔵のいらついた声が、厨房に響き渡る。

パーティーの主催者として悪蔵もそれなりに気配りをしているようだ。

「ごめんごめん、悪蔵君。今他のテーブルの人に飲み物作ってるから、それが終わってからすぐに手配するよ。」

パーティーのもてなしに慣れているとはいえ、回を重ねるごとにその規模は増大しており、善蔵一人でこなすにはもう限界に達していた。

 

悪蔵が善蔵を雇う理由。

それは善蔵が知能発達障害であるが故に低賃金であっても文句を言わずに働き、このように闇の商売をしていても感づかれる心配もなく、悪蔵にとってあらゆる面で都合の良い存在であるからだ。

善蔵が悪蔵に感謝していることも十分承知している。

それを手玉にとってのこの処遇だ。

善蔵が悪蔵に対して感じている友情、恩義なんてものは悪蔵には微塵もない。

あるのはただ自分の欲望を満たすことのみ。

利用できるものは全て利用するのみ・・・。

 

審判。

それは一瞬の出来事だった。

大麻をふかしながらよからぬことにふけっていた連中が火事を引き起こし、その火が一気にエンジンのガソリンに燃え伝わりクルーザーは大爆発に見舞われたのだ。

 

クルーザーに乗ってた人は全員即死。

 

善蔵は我に気づいた。

体が軽く感じる。

かすかな浮遊感とともに周りが光明に満たされている。

ほのかな温もりもある。

上方を見上げると白色の渦から次第に青白い輝きが周辺に広がっており、自分の体がその渦の中心に向かって上昇しているのが感じられる。

どこからともなく、声が聞こえてきて、

”昆虫観察の世界へようこそ!”

と明るい調子が耳元に響いた。

すると、ぱっと視界が開けたと思うと、なんと『昆虫記』の筆者であるファーブルが自分の眼前に立って手招きをしているではないか!

「これから一緒に昆虫観察をやって行こう。」

そう言うと彼は善蔵の右手をとって、光輝く渦の中心へと上方に向かって導いていった。

 

刹那、善蔵はふと足下を見つめた。

大炎上を起こしたクルーザーが煌々とオレンジ色の光を放ちながら、ゆっくりと海に沈んでいく光景が広がっている。

”あっ、そうだ、あの船の中にいたんだっけ。”

忘れていた記憶が次第に蘇る。

”悪蔵君はどうしているかな。”

そう思った瞬間、彼の眼が悪蔵を捉えた。

焼けただれた体を漂わせながら、他の多くの乗客と共に、煙と炎が充満する船上をただただ行ったり来たりしている。

”もうその船は沈んで行くのだから早く逃げた方がいいよ!”

そう叫んだ善蔵だったが、彼の声はファーブルによって天上に導かれるスピードにかき消され、燃え盛る炎の轟音の中をさまよう善蔵には到底届きはしないのであった。

完。

次回パート2では、この物語を基にいい歳の取り方についてお話します。


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